カウンセリングルームながまち 室長 精神保健福祉士 樋口明夫
1.「対話」に関するお勧めの一冊
以前本ブログに私の「オープンダイアローグとの出会い」について書かせていただきました。この「出会い」以来オープン・ダイアローグに関する本はできるだけ購入して読むようになり、 現在当カウンセリングルームの書棚には十数冊の関連する書籍、雑誌が並んでいます。
その中で「お勧めはありますか?」と聞かれたら(聞かれた事は有りませんが)迷わずこの「対話のことば オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得」をお勧めします。
理由は、かわいいイラスト多数でとてもわかりやすく、しかしながらオープンダイアローグの理論を正確に踏まえた、とても奥深い内容が盛り込まれているからです。
井庭崇(いばたかし)氏と長井雅史(まさし)氏の共著で、平成30年7月出版です。井庭崇氏は慶應義塾大学総合政策学部教授で、ご専門は創造実践学、パターンランゲージ、システム理論。長井雅史氏は慶應義塾大学SFC研究所上席所員で、対話の研究とコーチングの実践をなさっているとのことです(所属・職名は出版時)。
2.実践的でありながら奥深い「対話の心得集」
著者のお二人が本書を執筆された意図は、本書の「はじめに」に丁寧に説明されており、問題解消のために実績があるオープン・ダイアローグの考え方をもとに、対話とは何かを紐解き、その心得をまとめたものであるとのことです。
いわゆるマニュアルではなく、実践的に対話に取り入れて行くことができる考え方を30の「ことば」にまとめ、体系化したしたものです。
「対話」という抽象的なものを体系化するのは、大変なことだと思うのですが、本書のまとめ方は本当にすっきりしており、見事というしかありません。
No1からNo30までの「ことば」が説明されており、最初に1.「体験している世界」、2.「多様な声」、3.「新たな理解」の三つのことばが説明され、次にこの1から3までのそれぞれに関連する言葉が9つずつ計27項目説明されます。27個の「ことば」は次のとおりです。
1.体験している世界
4.ひとりの人として
5.じっくり聴く
6.そのままの言葉
7.開かれた質問
8.言葉にする時間
9.語りへの応答
10.内側から捉える
11.感情の通路
12.これまでの敬意
2.多様な声
13.関係する人
14.対話の支援チーム
15.輪になる
16.全員の発信
17.ゆったりとしたペース
18.応答の連鎖
19.小さなサイン
20.気持ちの共鳴
21.リフレクティング・トーク
3.新たな理解
22.発生時の立ち上げ
23.連続的な実施
24.一貫した関わり
25.それぞれの認識
26.混沌とした状態
27.意味の変容
28.一緒に見出す
29.広がりのある文脈
30.未来への仲間
3.オープンダイアローグでの対話を「パターン・ランゲージ」で体系化
これら30個の「ことば」ひとつひとつについて、「その状況において」、「そこで」、「その結果」が記述されています。
例えば、「4.ひとりの人として」では次のように記述されています。


パターン・ランゲージとは、成功している事例やその道の熟練者に繰り返し見られる共通パターンを抽出し、決まった形式(パターン)で言語化することであり、このようにわかりやすい形式で整理することによって、優れた方法、「奥義」のようなものを、多くの人と共有可能にすることになるということです。
パターン・ランゲージでは、ある状況、そこで生じる問題、その解決方法、そこで生じる結果が記述されます。本書では、30個の「ことば」について、「その状況において」、「そこで」、「その結果」が記されることで、実践の秘訣を「交換・蓄積」ができるようになります。
4.実践的な「対話」の秘訣集
オープンダイアローグの本は、ページ数が多くて文字が細かく、内容は興味深いけれども読むのが大変な本が多いのですが、本書はページ数も手ごろで手に取りやすく、最初から最後まで通読しても、参考にしたいページだけを読んでもOKな、とても取りつきやすい本です。
しかしながら、盛り込まれた内容はオープンダイアローグの大切にしているところを、その深いところまで余さず伝えています。
今年3月まで、仙台市の区役所保健福祉センターで管理職をしていましたが、本書に出会ってからは、職場の仕事机の近くにおいて、時間があるときにたまたま開いたページを読んでみたり、難しい話し合いをする前に、「対話」の心構えをおさらいしながら心を落ち着けたり、さまざま活用させていただきました。
現在<カウンセリングルームながまち>でクライアントのお話を伺う中でも、時折ページを開いて、折に触れて対話に向かう姿勢を再確認させていただいている座右の書、心の一冊です。

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