1.斎藤環氏の講義「オープンダイアローグへの招待」
先週の土曜日7月5日に金剛出版ワークショップ「オープンダイアローグへの招待」をオンラインで受講しました。午前はオープンダイアローグの日本への紹介者である斎藤環(たまき)氏の東京での講義、午後はグループワーク(対面、オンライン)と、斎藤氏と参加者の質疑応答というプログラムでした。東京まで行かなくても、自宅で研修が受けられる、便利な時代になったものです。
先月のブログ「オープンダイアローグとの出会い」にも書きましたが、オープンダイアローグとは、1980年代にフィンランドのケロプダス病院という精神科病院で始められたケアの技法であり、対話実践の哲学とも言えるものです。
今回講義された斎藤環氏は「ひきこもり」の治療・研究で高名な精神科医です。著書「社会的ひきこもり」は「ひきこもり」支援の分野における古典的な名著で、私もこれまでのひきこもりのご本人・ご家族の支援にあたり、参考にさせていただいた1冊です。
斎藤氏は約10年前から現在まで「オープンダイアローグ」の概念や理論の、我が国への紹介を続けられており、「日本は世界の中でも特にオープンダイアローグへの関心が高い国」とのことでした。今回のワークショップにも会場のほか多数の参加者が、オンラインで全国各地から参加しており、関心の高まりが感じられました。
斎藤氏の講義は「オープンダイアローグの七原則」など基本的な内容から始まりましたが、お話の随所に非常に興味深い内容がちりばめられていました。
2.斎藤先生の講義より
印象的な言葉のごく一部を以下に箇条書きします。
- 「対話が続いてさえいれば何とかなる」という治療者の楽観性が治療的
- 「改善」、「回復」は、目標でなくおまけ。治療しようとしないほど回復する。
- 「傾聴」のみでは対話にならない。必ず「応答」する必要がある。「傾聴」では、傾聴する側が「聴いてあげる」という特権性を持つ。
- 議論、説得、尋問、アドバイスは対話の妨げにしかならない。アドバイスの本質は「あなた間違ってますよ」。クライアントの力を奪う。
- 「正しさ」ではなく、「主観」を大事にする。できるだけ正しいこと(=客観的事実)を言わない。「正しいこと」を言うと対話が終わってしまう。
- オープンダイアローグでは、「ハーモニー」、「シンフォニー」ではなく、「ポリフォニー(多声性)」を大事にする。ハーモニーは同意の強制。
3.オープンダイアローグの様々な分野への応用
一番驚いたのは、「全国の刑務所でオープンダイアローグが取り入れられることが決まった」ということです(斎藤氏によれば「これで日本の刑務所は一気に世界最先端となる」とのこと)。本当なのか?と思って調べたら、本当でした(法務省HP「再発防止策(素案)」参照)。
オープンダイアローグは、医療・保健・福祉等様々な「支援」に伴う権力関係(上下関係)をできるだけ排除しつつ、様々な問題や症状を「本人の問題」と矮小化せずに、当事者や当事者を囲むネットワークの強み(ストレングス)を生かしながら「解消」していく手法です。フィンランドでの取り組みは、急性期の精神疾患の介入から始まりましたが、その後わが国でもひきこもり、家庭内暴力、アディクション(嗜癖)など、様々な領域において実践が進められています。今回のワークショップはスクールカウンセラーなど心理職の参加が多かったですが、不登校やいじめなどにも応用が可能ではないかと思われます。
今後、精神科診療の領域のみならず、福祉・保健・教育・司法などさまざまな分野で徐々にその考え方・手法が応用されていくことが期待されます。
今後も、オープンダイアローグについて、本ブログにてご紹介していきたいと思いますので、お読みいただけるとありがたいです。。
カウンセリングルームながまち 室長 樋口明夫

コメントを残す