酒の文字と手のひらのイラスト

高齢者のアルコール問題

1.増えています・・・高齢者のアルコール問題

 急速な高齢化により、我が国の高齢化率(人口に占める65歳以上の人の割合)は約29%、仙台市では約25%程度となり、3人から4人に一人が高齢者、という社会になっています。
 高齢者が増えると、アルコール問題で苦しむ高齢者、そのご家族も増えてきます。アルコール依存症の人は約100万人と言われていますが、そのうち治療につながって、回復の道を歩んでおられる方はわずかであり、多くの人やご家族が苦しんでいるのが現状です。今回は、高齢者のアルコール依存症、アルコール問題の考え方についてお話します。

2.本人、家族への深刻な影響

 健康で長生きできることはもちろん良いことなのですが、アルコール問題、アルコール依存症によって、心や体の健康が損なわれたり、ご家族との人間関係にひびが入って、ご本人、ご家族の生活の質(QOL)が大きく損なわれてしまうとしたら、とても残念なことです。
 一口に高齢者のアルコール問題と言っても、いろいろなパターンがありますが、もっとも典型的なものは若いころから長期の飲酒歴がある大酒家の方が、退職後に生きがいを喪失して、日中から飲酒をするようになり、飲酒のコントロールが効かなくなるパターンです。進行するにつれてご家族への暴言や暴力が伴うことも少なくなく、ご家族の負担やストレス、本人への怒りや恨みはMAXとなります。

3.アルコール依存症は「否認の病気」

 ご家族はなんとか、本人に酒量を減らしてもらうために、やさしく言ったり、口うるさく言ったり、冷静に説得したり、ありとあらゆる手段を尽くしますが、アルコール依存症は酒量をコントロールできない病気なので、本人にできない酒量のコントロールをご家族が行うことはなおさらできません。逆に「うるさく言われるから飲まずにいられない…」と、飲む理由にされてしまいます。
 アルコール依存症は「否認の病気」とも言われ、自分の飲酒に問題があること、アルコール依存症という病気であること、治療が必要であることを認めることが難しい特徴があります。表面的には「飲もうが飲むまいが俺の勝手だ」等強がっているけれども、内心では自分の飲酒に困っていたり、健康を害することを不安に感じていることが少なくありません。

4.どう対応するか?・・・ご家族からの相談がカギ

 では、ご家族など身近な人で、このようなアルコール依存症が疑われる人がいたとき、どのように対応したらよいのでしょうか?
 かつては「底つき」を待つ、と言って本人が苦しくなり、助けを求めてくるのを待つことが推奨された時期がありました。しかし、底つきを待つうちに問題が進行して、重大な病気が発生したり、亡くなってしまうことがあるため、現在「底つきを待つ」対応は否定されています。
 かわって、早期に支援を開始して重症化して手遅れとなる前に精神科受診やAA、断酒会等の自助グループにつなげることが推奨されています。
「そんなこと言って、どうやって病院へ連れて行けばいいんだ?」という声が聞こえてきそうです。ご本人に病院に行くことを勧めても、同意されることは稀ですので、無理をなさらず、まず今困っていらっしゃるご家族など周囲の方がアルコール依存症に理解のある相談機関にご相談されることが、遠回りなようで一番の回復への近道です。ご家族が継続的に相談を続けてアルコール依存症という病気について、また、この病気をお持ちの方との付き合い方について学ぶうちに、ご本人の行動に変化が現れたり、ご本人自身が治療や相談につながることは珍しいことではありません。
 長年飲酒を続けているご本人を見ると、この飲酒が止まるなどということが信じられないというお気持ちはよくわかります。しかし、アルコール依存症は治療により回復可能な脳・心の病気です。長年社会生活を続けてこられたことは高齢者のアドバンテージであり、若年のアルコール依存症の方よりも回復しやすいと言われていますので、あきらめずに早めに適切な相談機関へご相談されることをお勧めします。
 当<カウンセリングルームながまち>では、経験豊富なスタッフが、継続的にご相談に応じております。必要に応じ家庭訪問も行っておりますので、ぜひお気軽にお電話ください。

5.まとめ、とAUDIT

 なお、もし今このブログをお読みの方で、自分自身のお酒の飲み方に不安がある方がいらっしゃいましたら、下記のリンクからAUDIT(オーディット)という検査をご自身でやってみることをお勧めします。AUDITはWHO(世界保健機関)が作成したもので、全世界的に利用されているスクリーニングテストです。
 繰り返しとなりますが、高齢者のお酒の問題は適切な支援・治療により回復可能な問題です。今お困りの方、心配されている方が、勇気をもって相談機関・医療機関にご相談下さることをお勧めいたします。

カウンセリングルームながまち 室長 樋口明夫

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