カウンセリングルームながまち 室長 精神保健福祉士 樋口明夫
1.366日分の自己肯定
当カウンセリングルームの書棚に「心の傷を癒すカウンセリング366日 今日一日のアファメーション」(以下「今日一日のアファメーション」と記述)という文庫本があります。二段組みで366ページのかなりボリュームのある本です。
著者の西尾和美先生はアメリカ・カリフォルニア州で活躍されたセラピストで、仙台にもたびたび来てくださり、機能不全家族で育った「アダルト・チルドレン(AC)」、の人、子ども時代に児童虐待等によりトラウマ(心的外傷)を受けた人などを対象としたカウンセリングのワークショップ等を行っておられました。
本のタイトルにある「アファメーション」とは、「自己肯定」のことです。子ども時代に親にアルコールやギャンブル、薬物、買い物等のアディクション(依存症)があったり、両親がDVで傷つけあっていたり、身体的・心理的・性的虐待やネグレクト(放任)等児童虐待を受けることによって、健全な自己肯定感を育むことに困難があり、成人になってからも生きづらさに苦しむ人は少なくありません。
2.子ども時代の過酷な体験と自己否定感
子ども時代の過酷な体験は、子どもの責任ではなく、明らかに親の世代の責任ですが、子どもが親への怒りを自覚することは難しいので、「自分のせい、自分が悪いから…」と考えてしまいがちです。過剰に「自分が悪い」と考える傾向があると、無意識に自分に厳しい、あるいは自分を傷つけてしまうような選択を毎日の生活の中でしてしまいがちになります。
リストカット、オーバードーズ等自分を傷つける行為の背景にもそのような「自分に厳しすぎる心」、「自己処罰」の感情があります。自分を責めすぎず、健全な自己肯定感をはぐくむために、毎日自分自身を肯定するメッセージを自分自身に届けること、は厳しい子ども時代を生き抜いた人が、生きづらさを手放し、自分自身をケアできるようになるためにとても大切なことです。
3.西尾先生からのメッセージ
西尾和美先生の「今日一日のアファメーション」には、子ども時代に過酷な体験をされ、大人になった今、生きづらさを抱えた人たちに向けて、自分を肯定し、前向きに成長していくための力強いメッセージが、一日一言ずつ、先生の解説と共に366日分示されています(2月29日があるので、365日ではなく、366日です)。
例えば、本日7月15日のアファメーションは「言いたいことは、はっきり言おう」です。毎日、「自分は生きるのに、あたいする人間です。自分は、自分のままでいいのです。」から始まる自己肯定の言葉と共に366日分のアファメーションが示されており、傷ついた人の回復へ向けた西尾和美先生の並々ならぬ情熱を感じる1冊です。
1996年に単行本として刊行され、1998年に文庫化、私の本は2017年発行の第33刷ですから、長年にわたり、多くの人を勇気づけ、回復の手助けをしてきた稀有な1冊と言えます。
4.西尾先生のワークショップでの体験
私が西尾先生のワークショップ「リプロセス・リトリート」に参加したのは、今から30年以上前のことで、岩沼市のグリーンピアを会場に3泊4日で行われたものでした。当時私は仙台市役所で福祉関係の仕事をしていましたが、4日も休むのは気が引けて参加を迷っていたところ、ソーシャールワーカー、カウンセラーの先輩から「風邪ひいたことにしてでも参加した方がいいよ」と肩を押され、思い切って参加したものでした(仮病は使わなかったと思います)。
ワークショップには、子ども時代のトラウマに苦しむサバイバーの人、摂食障害の人とそのご家族、ソーシャルワーカーやカウンセラー、精神科医など、全国から多くの人が参加していました。最初に参加者全員で輪を作り、西尾先生が「この場が安全な場であるように」と唱えながら、鐘を鳴らしてスピリチュアルな儀式を始めた時は、「宗教みたいなやばいところに来てしまったのか?」と不安になりましたが、その後参加者皆でそれぞれの体験をシェアしたり、サイコドラマを行ったり、本当に貴重な体験ができました。西尾先生と食事をご一緒したり、身近にお人柄に接することができたのも良い思い出となりました。
5.心の重荷を軽くするカウンセリング
子ども時代の過酷な体験は思い出すことも辛いために、心の中に閉じ込めて誰にも話せないことが多いですが、閉じ込めておくことで様々な心身の不調や、自分や身近な他者を傷つける行動につながることがあります。一人で思い返して心の中で反すうすることはお勧めできません(辛すぎます)。批判や不必要なアドバイスをしてこない安全な相手、安全な場所で少しずつ話してみることを、考えてみてください。
当カウンセリングルームも、子ども時代に過酷な体験をされた方が、ご自身をいたわり、心の重荷を軽くするためのお手伝いをしてまいります。最初は勇気のいることですが、ぜひお気軽にご相談ください。

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