今朝の朝日新聞に「ひきこもり支援 個々に寄り添って」という記事が載っていました。
全国に146万人いるとされるひきこもり状態にある人への、自治体における支援の指針が15年ぶりに改訂されたことに関連して、高齢のご夫婦と「ひきこもり」の息子さんの事例が紹介されています。
ご夫婦は、息子さんが部屋から出てこなくなった16年前にどうしたらよいかわからず、役所の窓口に相談したけれど、「本人を連れてきてください」と言われ、「それができないから相談に来ているのに」と困惑し、役所での相談を中断されたとのこと。
代わって、「自立のプロ」と称する民間業者に1年分で1,000万円(!)の費用を払い、その業者は7~8人で取り囲んで、本人を無理やり連れだして施設?に入れたそうです。約1年後、追加の1,000万円(!)を払ったものの、その業者は破産し、ご夫婦は息子さんを迎えに行ったとのこと。しかし、帰宅後息子さんは再び自室にこもってしまい、ご夫婦は「おかしな業者に頼って、息子を傷つけてしまった」と後悔されているそうです。
このお話はいろいろなことを考えさせてくれます。本人を無理やり連れ出し、高額なお金をむしり取る業者は論外としても、最初にご夫婦のご相談を受けた役所の窓口では、どのような対応をすればよかったのでしょうか。役所に限らず、相談を受けて支援にあたる人の対応が問われています。「本人を連れてきてください」ではなく、どう伝えればよかったのか。どのような対応がご本人と、相談に来られたご夫婦に最善だったのか。
今回15年ぶりに改訂され、1月に公表された自治体向けの新指針では、社会参加や就労など、「自立」だけを目標とするのではなく、本人や家族と対話を重ね、自分で生き方を決めていける「自律」を目指す支援の重要性が強調されているとのことです。相談現場で「自立」が目標とされることはよくあることなのですが、求められてする「自立」は「自立」と言えるのか?それって支援と言えるのか?などの疑問を、これまで長く自治体の相談の現場で働いている中で感じていました。
自立を求める支援からの転換を求める今回の指針改訂はいいところをついている、と思います。
もう一ついいなと思うのは、「対話を重ねる」ことが重視されている点です。これまで「ひきこもり」の方の支援をさせていただいた中で、私が常に参考にしていたのは、精神科医の斎藤環(たまき)先生の一連のご著書です。特に「社会的ひきこもり」という本は不朽の名著と思います。
いわゆる「ひきこもり」のご本人に、相談機関に来ていただくことは簡単なことではないですが、まずはご家族に相談機関に足を運んでいただき、ご家族とご本人との対話の復活を目指すこと、そうする中で、いずれはご本人にも相談機関に足を運んでいただけるようになることなど、粘り強く続けていくことが大事だと思います。
「話をするだけで変わるのか?」、「対話ができないから困っている」、「粘り強くというが、いつまでこの状況が続くのか?」など、疑問はもっともだと思います。でもやはり「対話し続けること」の価値を信じて少しずつ進んでいきたい、ご相談に来てくださった方の力になりたい、と考えています。
カウンセリングルームながまち 室長 樋口明夫

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