エルソーラ仙台研修室からの夜景

当事者の語りから学ぶ「生きづらさ」・・・2月5日宮城県アディクション問題研究会ご報告

1.当事者による当事者支援・・・仙台ダルク
2.「使うために生き、生きるために使う」
3.「生きづらさ」とアディクション(依存症)
4.「生きづらさ」の根っこ・・・親子関係
5.当事者のメッセージ、回復(リカバリー)への希望

1.当事者による当事者支援・・・仙台ダルク

 2月5日第506回宮城県アディクション問題研究会(アディクション研)のご報告です。

 今回は、仙台ダルクボランティアスタッフの福岡様よりお話をいただきました。

 仙台ダルクは、青葉区上杉にある薬物依存症回復支援施設。当事者(回復者)による当事者の支援が大きな特徴です。

 アディクション研では、これまでも、施設長の飯室勉さんはじめスタッフの皆さんから、体験した人でないと絶対話せない、貴重なお話を毎年のように聞かせていただいてきました。

 今回お話しいただいた福岡様も薬物・アルコール依存症の当事者で、断薬・断酒後もうすぐ5年とのことでした。 

2.「使うために生き、生きるために使う」

 最初に福岡様から、これまでの回復に至る道のりをお聞きしました。さわやかで、時にユーモアを交えた語りでしたが、内容はリアルで凄絶なものでした。

 一度ダルクにつながって社会復帰したのち、カスハラ対応など仕事のストレスが引き金となって薬物・アルコール使用が再発。

 奥さんや子どもとも別れることになり、再びダルクに戻る直前には、次のような状態になっていたとのことです。

  • (薬物・アルコールが)空気・水・食べ物と同じレベルで必要不可欠。それなしで生きていけなくなる。生命を維持するためになくてはならないもの。
  • やめてどうやって生きて行けるかわからない。やめた生活は「ファンタジーの世界」のように感じられる。
  • 使うために生き、生きるために使う。
  • 約束が守れず、人間関係がうまくいかなくなる。孤立するほど使用が加速する。
  • 孤独、心の傷を癒すためにさらに薬物が必要になる。悪循環、負のスパイラル。
  • 素面(しらふ)に戻るのが嫌になる。

  しかしながら、同時に次のようにも思っていたとのこと。

  • 本当はこのままではまずいと知っている。「何とかしなきゃ」
  • 薬物を使っている限り人生うまくいかないと知っている。
  • わかっているけど、やめたいけどやめられない。

 人の気持ちは両価的(アンビヴァレント)です。かろうじて残っていた、「このままではまずい」という気持ちが、福岡さんを回復の方向へとまた進ませたのだと思います。

3.「生きづらさ」とアディクション(依存症)

 今回福岡様はわかりやすいスライドを用意してお話ししてくださいましたが、その中でも次の図はとても分かりやすいと思いました。

アディクションの根っこに「生きづらさ」(福岡氏のスライドより)

 「生きづらさ」ってよく(時に安易に)使われる言葉ですが、「生きづらさって何だろう?」と考えると、なかなか難しい。

 「生きづらさ」の中身はこれだけではないですし、人によっても違うでしょうが、この図は福岡様の実体験を踏まえているだけに説得力があります。

 薬物・アルコール・ギャンブルなどアディクションのある人はこの図を見てピンとくると思います。

 アディクションなどの「行動症状」だけでなく、「生きづらさ」が根っこにあって「うつ状態」や「気持ちの浮き沈み」のような「精神症状」が現れることもおこりえます。

4.生きづらさの根っこ・・・親子関係

 「生きづらさ」の根っことしての、幼少期の家族関係についても詳しくお話しいただきました。

 表面的には何の問題もないように見える、社会的・経済的に恵まれた家庭の中でも、健康な自己愛をはぐくむことができず、子どもの自己否定感が強まってしまう親子関係・家族関係は決して珍しくありません。

 子どものためを思っての親の言動が、結果として子どもを傷つけてしまうこともあります。

 甘やかすでもなく、放任するでもなく、期待しすぎるでもなく、ちょうどいい加減の、子どもの気持ちやニーズに沿った子育てって難しい。親に余裕がないとできないことです。

 現代では核家族での子育てが主流となりましたが、もともと人間は猿の仲間であり、長い間群れの中で子育てを行ってきた歴史があります。

 母親だけ、あるいは両親だけでの孤立した子育ては、過剰な子育て負担と背中合わせ。社会全体での子育て支援が緊急の課題だと考えさせられました。

5.当事者のメッセージ、回復(リカバリー)への希望

 5年前には薬物・アルコールの過剰使用でどうにもならなくなっていた福岡氏が、仙台ダルクやNA(ナルコティクス・アノニマス;薬物依存者の自助グループ)の中で回復し、今は私たちの前で素晴らしい体験談をお話しされています。

 今回のアディクション研にはいわゆる専門家、支援者の人ではない「当事者」の人も多くご参加いただきましたが、福岡さんのお話しから回復への希望を受け取ることができたのではないかと思います。

 薬物というと「ダメ、ゼッタイ」とか、「○○やめますか?人間やめますか?」みたいなネガティブな言葉を使ったキャンペーンばかりが目につきますが、ダルクやNAなどにつながって、地道な活動を続け、回復の道を歩んでいる人はたくさんおられます。

 回復の希望を体現しているそのような人たちにこそ世の中の光が当てられるべきだと、考えさせられました。

 福岡様、貴重なお話を本当にありがとうございました。

カウンセリングルームながまち 室長 精神保健福祉士 樋口明夫


 (写真(上)は2月5日エルソーラ仙台研修室からの夜景)

2026年2月アディクション研

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