ヒガンバナの花

「発達障害診断バブル」

カウンセリングルームながまち 室長 精神保健福祉士 樋口明夫

1.秋田監督のパワハラ報道に思うこと

 サッカーJ3高知FCの監督をされていた秋田豊さんが、選手・スタッフにパワハラを行ったため、解任されたとの報道がありました。秋田さんは選手時代鹿島アントラーズや日本代表で活躍したディフェンダーで、闘志あふれるプレーがとても印象的でしたので、報道されたことが事実とすれば残念です。

 ところで、報道によれば、秋田監督はスタッフに対して「お前ADHDだろ。病院行け。」と発言したということでした。

 ADHD(注意欠如多動症)は発達障害(神経発達症)の一種で、子ども時代は、落ち着きのなさが目立ち、成長するにつれて、不注意が目立つ人が多くなると言われています。片付けが苦手という特徴がある人もいます。

 ただし、子どもでも大人でも落ち着きがなかったり、不注意が目立つ要因には様々な可能性があり、落ち着きがない、または不注意イコールADHDというわけではないことには注意が必要です。

2.「発達障害診断バブル」

 私が報道を見て気になったのは、また医師でない人がADHDなどの発達障害という言葉をネガティブなレッテルとして、他者に簡単に投げつけている、そういうことが本当に多いな、ということです。

 あらためて言うまでもないことですが、病名をつける診断行為は医師しか行うことができません。「発達障害」も一つの診断名であり、医師しか他者に伝えることはできないはずなのに、医師でない人(保健師、看護師、公認心理士、精神保健福祉士、教員など資格保有者も含む)が他者にレッテルを貼っていることが本当に多いのです。しかも、「発達障害ではないか?」と言っている人が本人に会ったことがない、などということも珍しくないのです。
 
 私も、これまで児童相談所、保健福祉センターなど、保健福祉の現場での業務の中で、発達障害を持つ方を支援する機会は多く、発達障害に関する研修を受講したり、書籍で勉強する機会はかなりありましたが、研修で講義をされたり、発達障害についての著書のある専門の医師はほとんどの場合、「発達障害の診断は難しい」と言われたり、そのように記述されています。特に発達の途上にあるお子さんの場合、一回の診察だけで診断に至ることは少なく、複数回の診察や心理検査等を行った後に慎重に診断をされています。

 私の経験の中でも、「発達障害では?」と、ご本人に会ったことのない自称専門家の人に言われていたご本人に実際にお会いしてみると、(私も医師ではありませんが)「それは考えられない」、ということがこれまでに何度もありました。

 なので、本人に会わずに「発達障害では?」、「○○症候群では?」と口にする人の話は、眉に唾を付けながら聞くことにしています。このような自称専門家は、「発達障害では?」、「○○症候群では?」と「問題」に名前を付けることで一時的な安心を自分と相手に与えようとしたり、「専門家」としてのマウントを取ろうとしているように思えるのです。

 しかしながら、有資格の自称専門家が口にすると、一般の方は「発達障害なんだ」と思い込んでしまうのは無理のないことです。

 専門医が口を揃えて「難しい」と言う診断を、医師でない者が安易に口にしている傾向は「発達障害診断バブル」とも言える状況です。
  
 社会学に「ラベリング理論」という考え方があります。簡単に言うと、「あいつは非行少年だ」というラベル(レッテル)を貼られることによって素行不良になる、という考え方です。この理論が正しいとすると、「発達障害では?」とラベルを張られた人の行動が変化するということは十分に考えられることです。

3.診断は何のために?

 診断は何のためにあるのかと言えば、診断がつくことによって、医療サービスや各種福祉サービスが受けられるようになるためです。また、診断がつくことで、家族など周囲の人がその人のことをより良く理解できるようになり、当事者が過ごしやすくなるのであれば、とても素晴らしいことです。実際に診断を受けることで、適切な医療サービスにつながったり、経済的な支援や、就労支援などの福祉サービスにつながり、QOL(生活の質)が向上した人が多数おられることは承知しています。

 そうでなくて、「発達障害では?」とか「お前は○○だ!」と、医師でもない人がひどく安易に他人にレッテルを貼っている、また、言いっぱなしの雑な「診断」が乱発されている現状を嘆かわしく感じます。

4.診断に(さほど)こだわらずに対話を続けていく「対話主義」

 私は、診断にさほどこだわらず、対話を続けていくことを目的とした対話を続けていく、そうすることで問題の解消を目指すオープンダイアローグの「対話主義」の新しさと可能性に魅力を感じています。
  
 オープンダイアローグについては、本ブログにてこれまで何回か投稿しておりますので、お読みいただけるとありがたいです(「オープンダイアローグとの出会い」、オープンダイアローグの7原則(その1)、(その2))。
(写真はカウンセリングルームながまち前、大家さんが植えたヒガンバナ(9/29))

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