カウンセリングルーム室内

自助グループの言葉③HALT「ストップしよう」

カウンセリングルームながまち 室長 精神保健福祉士 樋口明夫

HALT when Hungry,Angry,Lonely,Tired

お腹が空いた時、怒っている時、寂しい時、疲れた時はストップしよう

自助グループの言葉

 これまで、本ブログにて、自助グループの言葉「平安の祈り」、「これもまた過ぎ去る」をご紹介いたしました。今回は「HALT(ホールト)」をご紹介します。

1.自民党高市総裁のワークライフバランス発言に思うこと

 先日自民党の新総裁に選出された高市早苗氏が、就任後のあいさつで、「ワークライフバランスは捨てて、馬車馬のように働く」と言われたそうです。

 長時間労働の解消が課題となっている国の首相候補が言うのはいかがなものかという意見があり、それももっともなのですが、新聞の朝刊2面に毎日掲載される「首相動静」欄を見ると、もともと総理大臣にワークライフバランスなどないようで気の毒です。

 「首相動静」には、毎日朝から夜まで、国内外の要人と面会したり、会議に出席したり、分刻みのスケジュールが大量に入っています。いつも「総理って大変だな、よく体を壊さないものだ」と心配をしておりました。

 総理大臣の方にも、総理大臣としての自分と、そうではない「素の自分」があるはずですが、「首相動静」に載るような仕事の時は常に総理大臣としての自分でいなくてはなりません。いくら総理になるような特別な方とはいえ、疲れを感じる時もあろうかと思います。

2.普通の人にも休めない時があります

 総理大臣のような特別な立場ではない普通の人にとっても、疲れ切っているとき、なんとなくイライラしているとき、ふとした拍子に寂しさに襲われるとき、それでも仕事その他のあれこれに追われていて、休むことが難しい時があるものです。

 やっとの思いで頑張っているのに、普段ではありえないミスをしてしまったり、つい余計な一言を言ってしまって後で後悔したり…

3.過剰なストレスに注意を促す自分へのメッセージ

 自助グループメンバーのアディクト(依存症当事者)にとっては、空腹、怒っている気持ち、寂しい気持ち、疲れなどのストレスが、再飲酒、(薬物の)再使用、再ギャンブル、過食嘔吐等の引き金になりかねないですし、そんな時に無理して頑張った結果で後悔や自責の念が強まると、よりリスクが高まります。

 生き延びるための知恵として、再発につながるさまざまなリスクが認識され、リスクへの注意を促す言葉として冒頭の「HALT(ホールト)ストップしよう、お腹が空いた時、怒っている時、寂しい時、疲れた時」と言う言葉が紡ぎだされ、受け継がれているのです。

 HALT(ホールト)は英語で「ストップする」の意味。H、A,L,Tのそれぞれが、hungry、angry、lonely、tiredの頭文字になっています。初めてこの言葉を知った時、「うまいこと言うなあ」と感心し、それ以来、お腹が減っているとき、怒っているとき(イライラしているとき)、寂しいとき、疲れているとき、は無理しないよう、心の中で自分に声をかけるようにしています。

4.中井久夫氏の「精神的健康の基準」とも重なる考え方

 以前本ブログにてご紹介した中井久夫氏の「精神的健康を維持するために」15項目の中でも、第11として「しなければならないという気持ちに対抗できる能力」、第15として「現実処理能力を使い切らない能力」が挙げられていますが、今回の「HALT」とも関連した内容なのは興味深いです。

 今回の「HALT」はアディクション当事者にとっても、そうでない人にとっても、とても役に立つ、味わい深い言葉だと思います。

 お読みいただき、ありがとうございました。
(写真はカウンセリングルームながまち面接室)

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