「アルコホリックにとっては断酒(stop drinking)が大切。でも私たち配偶者にとってはストップ・ナギング(stop nagging)が大切よ。」
ロイス・ウィルソン(アラノン家族グループ創設者の一人)
1.アラノン家族グループの創設者による印象的な言葉
2.「うるさく言われれば言われるほどやりたくなる」アディクションのメカニズム
3.「共依存」の人への注意喚起の言葉
4.うまくいった方法を続ける、うまくいかない方法はやめる、問題を外に出す
1.アラノン家族グループの創設者による印象的な言葉
これまで、本ブログにて「自助グループの言葉」として「平安の祈り」、「これもまた過ぎ去る」、「HALT」をご紹介しました。
これまでご紹介しました3つの「言葉」は、いずれもアディクション(嗜癖)関連の自助グループ(以下SHGといいます)の中で祈りの言葉として唱えらたり、SHGのハンドブックに「スローガン」として載っている、ポピュラーな「言葉」です。
今回ご紹介します「ストップ・ナギング」という言葉は、SHGでのスローガンのような一般的なものではありませんが、アルコール依存症者の家族のSHGアラノン家族グループの創設者の一人ロイス・ウィルソン氏の言葉として、斎藤学先生の著書「ヒトは嗜癖する」所収の「「共依存」再考」の冒頭で紹介されており、私も斎藤先生のこの著書でこの言葉を知りました。
ロイスはアルコール依存症者のSHGであるAA(アルコホリクス・アノニマス)の創設者の一人として伝説的な存在であるビル(ウィリアム・ウィルソン)の妻であるとのことです。
2.「うるさく言われれば言われるほどやりたくなる」アディクションのメカニズム
「ストップ・ナギング」の”nag”は「ガミガミ𠮟りつける、小言を言う」こと。お酒をやめないアルコール依存症の夫にガミガミ小言を言いたくなる奥さんの気持ちはよくわかりますが、もともとお酒をやめたり、量を減らせないのがアルコール依存症です。
本人にやめられないものを、妻がいくらガミガミ言ったところで、やめられるわけがなく、逆に「妻がうるさいから飲まずにいられない」と飲む理由にされかねません。
アディクションの世界では、昔から「飲むなというのは、飲めというのと同じこと」と言われています。
3.「共依存」の人への注意喚起の言葉
ロイスの「ストップ・ナギング」はアルコール依存症の夫にばかり関心を向けて、夫をコントロールしようとし、「自分自身」を見失っていたロイス自身へ、そして多くの「共依存」の人への注意喚起と自戒の言葉でした。
そして、「ストップ・ナギング」が大事なのは、アルコール依存症の人を配偶者に持つ人だけではありません。
薬物依存症、ギャンブル依存症、買い物依存症などのアディクション(嗜癖、依存症)を持つ人のご家族、子どものゲームやSNSへののめりこみや万引き等の問題行動に悩む親も、問題を起こす「本人」に注意が向きすぎて、「またやるのでは?」という不安から「ガミガミ言う」ことが増え、そんな自分に自己嫌悪を感じていたり、いつも「本人」のことで頭が一杯になって「自分自身」を見失いがちになります。
アディクション(嗜癖、依存症)を持つ人は、特定の物質の摂取や特定の行動にのめりこみ、そのことで頭が一杯になっていますが、配偶者などその家族はアディクションを持つ本人(アディクト)のことで頭が一杯になっています。
そして、「ガミガミ言う」など、問題解決のため有効ではない手段を続けて、うまくいかずに自分を責めたり、自分自身を見失ってしまうことは、ロイスやビルが生きた100年近く前の時代からよく見られていたのでしょう。
ロイスはそのようなアルコール依存症の夫を持つ妻たちのSHGアラノン家族グループを組織して、この「ストップ・ナギング」という言葉を伝え、「ガミガミ言う」など効果のない方法をストップし、家族自身が回復することを目指したのでした。
4.うまくいった方法を続ける、うまくいかない方法はやめる、問題を外に出す
さまざまな心の不調、繰り返される「問題行動」の背景に家族内・職場内などの人間関係の悪化があることが少なくありません。
回復や、問題の解消のために、人間関係の改善が大切なのですが、うまくいかないコミュニケーションのパターンが固定化して、うまくいかないやり取りが反復されていることが多いのです。
繰り返されているやり取りを振り返り、トラブルのきっかけになっている言葉をストップする、相手の言葉でスルーできることはスルーする、もしうまくいった言葉があれば、またその言葉を使ってみるなど工夫してみることをお勧めします。
「うまくいった方法を続ける、うまくいかない方法はやめる」ことが大切です。
しかしながら、固定化したコミュニケーションパターンを変えることはたやすいことではありませんし、振り返ろうとするだけで辛い思いがよみがえってくることもあります。一人でやるのはつらいことも多いです。
そのような時は、当<カウンセリングルームながまち>にご連絡ください。お話を伺いながら、一緒に「ではどうすればよいか?」を考え、少しでも楽に生きていくためのお手伝いをいたします。
「本人」が相談、治療の場に登場することが難しい場合はまずご家族から。
「問題」は抱え込まず、「外へ出す」ことが解決の近道です。
カウンセリングルームながまち 室長 精神保健福祉士 樋口明夫

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